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新聞を読む自由

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Siberian Railway, Russia 2007

その朝は、どういうわけかゆっくり新聞を読む時間があり――、と冒頭のシーンで綴られるのは、沢木耕太郎の短編『ミッシング〈行方不明〉』でした(新潮文庫版『彼らの流儀』に収録)。パキスタンで行方不明になった日本人青年についての話ですが、そのストーリーの組み立てにいたく感心して、いまでもお気に入りの作品のひとつになっています。

いや、実はこれを引き合いに出したのは物語の主題とはまったく関係なくて、「沢木耕太郎ほどになるとフリーでやっていても新聞を読む暇が『その日たまたま』という程度なのか」という、どうでもいい感慨によっています。筆者(高橋)がフリーランスになって何よりも嬉しかったのが、毎朝ゆっくり食事をとり朝刊の隅々まで目を通せることだったからです。

だって、これが真っ当な会社だったら、朝、出勤して席に着くなりおもむろに新聞を広げるなど、平社員の分際に許されないでしょう? 一般にそういうことをしていいのは社長以下役員と、マドギワとの境界線があいまいな部長席のとぼけたオジサンくらい(笑)。少なくとも筆者がかつていた会社はそうでした。

偉い人は「時間は作るものだ」とかいろいろ言うでしょうけれど、現実、立ちっぱなしで片道2時間の電車通勤に残業と付き合い飲みの日々とくれば、それ以外の時間で新聞を隅々まで読む余裕などなかった。(最初はもちろん通勤電車のなかで頑張って新聞を広げていましたが、なにせ日々活字を見続ける仕事ですし、やがては乗車率200%の痛勤を耐えるためにコミックへ…)。

だから先日某社での打ち合わせ中に、担当編集の方が「私はけっきょく今は新聞取ってないんですよ。もう何年になりますかねえ…」と話していた時、ある意味ひどく懐かしく、またある意味とても可哀想に思えてしまいました。

雑誌編集者にとって、新聞を読むことはとても重要だと思います。ずーっと会社にこもっていると、実際のところ世の中で何が起きているかぜんぜん分からなくなる。ネットで情報を拾ったつもりでも、現状それはうわべだけのダイジェストで論理的思考も文章的探求もない手短な文字群ばかり…。土日もなく働いていたりしてるから、なおさら生活様式や思考回路が世間一般と乖離してしまう。

だからせめて毎朝ゆっくりと新聞を広げることぐらいはどの版元でも許してあげてはと思うのですが、どうでしょうか。

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