最果てのローカル線
暦がついに今年最後の月となった12月1日は、日本最北の路線である宗谷本線の撮影をしていました。東京ではようやく銀杏並木の黄金色がそれらしくなった程度の晩秋なのに、北海道の北の果て、稚内はすでに完璧な冬景色でした。
日本海から吹きつける横なぐりの雪のなか、1時間に1本の気動車を待ちつづけるのはさすがに寒かったです。海岸にレンタカーを停め、昨晩積もった新雪をかき分けて線路のある丘にのぼると、冬場は誰も歩かないはずの道の上には先客の跡。どうやらキツネの足跡みたいです。そういえば近辺ではヒグマに注意するようにと書かれている本もありました。筆者が黙々と歩を進めるなか、同行編集者のO女史はクマよけと称して何故か『森のくまさん』を歌います。
気温マイナス7度に途切れない海風。こう寒いと素手でカメラを持つ指先は10分もしないうちに冷えきってしまいます。ポケットに手を入れて熊笹の隙間にかがんで風雪を避けてたって結構ツライ。いますぐ列車が来てくれないとシャッター押せなくなるってば(!)。
実はそもそも北海道に来る行程で大阪発札幌行きの寝台特急トワイライトエクスプレスを取材しており、筆者は狭い車内で行動しやすいようにとなるべく荷物を小さくしていたのです。ダウンジャケットなんか邪魔だとばかりに薄手の服にしたのも失敗でした。
しかもあらかじめ時刻表で調べておいた通過時間を待つ間、ふと昨夕の特急列車の車内アナウンスが脳裏をよぎります。
「え〜、お急ぎのところたいへんご迷惑をおかけしますが、列車はただいま雪の影響で約9分の遅れで運行しております…」
う〜、お願いだから時間通りに来てくれ〜。そんな願いを知って知らずか、目当ての気動車はほぼ定刻にやってきました。吹雪の、しかも荒野の線路脇にひと組 の男女が突然現れるのですから、もしかしたら運転手の方が驚いたかもしれません。ほんとうは40分後に来る逆行きの気動車も撮る予定だったけど、それは担 当編集の「遭難の危険を感じる」というひと言で中止。まあよく頑張ったよとお互い自分を納得させて、さっさとその場を逃げ出したのでした。
頼りない小型のレンタカーで走る零下の海沿いの道もすごかったですね。路面はカチンコチンです。モーグルスキーが趣味で雪道だって大得意の筆者も、さすが に慎重にならざるを得ない。下り坂1キロ全面アイスバーンでその先100キロもず〜っとアイスバーンだなんて、本州の道ではあり得ないでしょう?
「そりゃそうだよねぇ、東京帰るよりロシアの方が近いんだもん…」
稚内の道路標識にはロシア語も併記されていました。撮影後は旭川まで約250キロの移動。道北は午後3時半には日が沈んでしまうこともあり、ヘッドライト が照らし出す雪をただただ見つめながら、どうしてあのとき『森のくまさん』に付き合わなかったのかと筆者を責めるO女史と闇夜のドライブをしたのでした。
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