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Chapter 01 バックパッカーという旅のスタイル

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HongKong, China  2009

僕がかつて1年と1か月アジア各国を旅していたとき、背負っていた荷物は60リットルのバックで重さ約30キロもありました。異常な重さですが、これはほとんどがカメラの機材です。普通の人はこの半分以下、20〜30リットルくらいのバックで10〜15キロ程度でしょう。荷物についてはあとで触れますが、1週間の旅も1年の旅も中身はまったく同じです。長旅は難しいのでは、体力がいるのでは、という心配もあまり要りません。お金もそんなに要りません。誰にでもできる旅です。

アジア地域であればだいたい、年間50万円〜60万円もあれば、宿・食事・交通そのほかすべてに足ります。何かに我慢する必要もなく、その土地においてまっとうな暮らしができます。僕の旅仲間のひとりに「半年日本でバイトして、貯めた100万円でその後1年半を旅の空」という暮らしで20代を終えた人がいます。彼は30過ぎてやっと大学に入り最近ついに卒業しました。

お金に関して言えば、筆者について書かれた毎日新聞の記事に「車を売って170万円を得た」とあります。ですがそのうち70万円以上がフィルム代や現像代で、実際の旅費は往復の飛行機を除くと1年でやっぱり50〜60万円。1か月5万円という計算なら余裕。実際は3万円ほどだと思います。

気をつけたいのは、決して「長旅が偉い」のではないということ。貧乏自慢や長旅自慢は貧しい発想だと思います。大切なのは「何を見てきたか」、もっと言えば「現地の人や文化とどんな触れあいがあったか」ではないでしょうか。

真面目な話をすれば、この点が日本の旅行界がいま最も見失っている視点だと思います。たとえば旅行誌でも海外ネタは非常に貧弱。「世界遺産」と 「食」ばかり。リタイヤ世代を中心に「ロングステイ」が一時期流行ったけれど、そもそもの姿勢が第三世界を見下しているケースが非常に多かった。

また、旅行代理店のツアーも「世界遺産・アンコールワット」とか「悠久のシルクロードを訪ねて——新疆ウイグル自治区」なんてキャッチコピーになり ますね。これはかなりの方が惹き付けられると思います。確かに筆者もそう。ツアーは連れて行ってもらえるし言葉の心配もないので便利ですが、そうではな い、別の魅力ある旅を紹介するのが当コーナーの主旨なので、そのシルクロードでのエピソードをひとつご紹介します。


あるウイグル人の感想

アジアはどこでもそうなんですが、観光業、宿の人やバイクタクシーの青年とか、飲み物売ってる子供とかは、みんな紙切れみたいなノートひとつで勉強 して、そうとうな外国語を話します。英語や日本語。カンボジアのアンコールで遺跡の階段上ってたら、ジュース売りの子供が日本語で、「そっちの階段はキビ シイよ」とか言う。

で、話はシルクロードへ戻るんですが、砂漠の中のオアシス都市トルファンは僕のような旅人ばかりでなく、ツアーでめぐる日本のお客さんも多く来ます。だから物売りやタクシーの客引きのウイグル青年たちはけっこうみんな日本語を話す。
「俺トルファンの力也って言われてるんだ、知ってる力也?」
な んて。実際そっくりでちょっと怖い。そんなやつが観光客に寄ってたかって物買えとか「砂漠に星を見に行きませんか」とか日本語で言うから慣れていないと確 かに怖い。添乗員さんは安全第一なので必ずお客さんにこう告げます。「ああいう人たちは危険なので相手にしないように」。

これは正直、失礼な話です。彼らは生活のために旅人から少しずつ独学で日本語覚えて、やっと暮らしてる。そのトルファンの力也が僕に例の調子で「星見に行きませんか」っていうんで、
「あっちにいるツアーのお客さんの方がお金持ってるでしょう」
って言ってみた。すると彼は、
「あの人たちは怖がってばかりで僕らを友達だなんて思ってくれないですよ。私たちは日本語話さないと仕事にならない。なのに勉強して話すようになるとこんどは『怖い』って。じゃあどうしたらいいんですか」
残念ながら、そんな話はアジア各国で聞こえてきます。

ツアーが悪いというのではありませんが、はるばる外国まで来て遺跡や美術館しか見ないで帰るとしたら、「何を見てきたのかな」という気もします。青 年の苛立ちも本音に違いない。話してみると客引きたち連中もいいやつばかり。確かに「砂漠ツアー500元」とか高いこといいますが、ぼったくりも商売の一 環。悪気がないことも多いし、どのみち「高いよ〜」って言えば値段は下がる。

ちなみに、ウイグル自治区は憧れのシルクロードでもありますが、もっと現実的な部分では、民族独立をいかに政府が押さえ込むかということを毎日やっ ていて、「コーラン教えただけで秘密警察にしょっぴかれて、数日後に頭おかしくなって帰ってきた」とか、そんな話も耳にする土地です。

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